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the aggregate of life

  • 2009-01-02
  • b
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試験サイト番号[6587]
患者番号[0069]
年齢:10歳
性別:女
体重:41ポンド(18.6キログラム)



その記録には、少女は名前の代わりに、そう記載されていた。

患者番号[0069]は、 試験番号[154-149]において、 56ミリグラムの「薬」を投与された。

投薬から1日後、 全身の力が抜け、片方の目は一点を凝視した。

投薬から3日後、彼女は死んだ。

記録には、次のように記載されていた。



対処:変更せず、そのまま続行
結果:死亡



1996年、ナイジェリアの北部のカノ地区で、 大規模な脳炎・髄膜炎の流行が発生した。

最終的な死者の数は、1万3千人以上にもなった。

次々に、倒れる子どもたちを 貧しくて、病院にも連れて行けず、 何も出来ずに、 ただ見守るだけだった親たちに、 ある日、ラジオ放送が、 国際医療援助団体「国境なき医師団」が無料で治療をすると伝えた。

だが、人々が集まった病院には、 国境なき医師団とは別にもう1つのグループが待っていた。

彼らは、 アメリカの世界最大の製薬会社ファイザーのスタッフだった。

当時、ファイザーは、 ある新薬の開発をおこなっていた。

トロバン(Trovan)と名付けられたその新薬は、 細菌性の病気に対して 今までのものよりも効果がある抗生物質とされ、 今後、ファイザーの主力商品として、ファイザーに莫大な利益をもたらすと期待されていた。

ただ、この薬に対して、1つの懸念があった。

トロバンの属するキノロン系の抗生物質については、 子犬や子ウサギの実験で、異常が起こることが報告されていたからだ。

ファイザーは、この薬の安全性を人間の子どもで、証明する必要があった。

だが、特に、細菌性の脳炎、髄膜炎についてのデータは、アメリカ国内での臨床実験の数は、まだ少なく……というより、患者自体が、少なかった。

ファイザーはもっと多くの被験者を必要としていた。

できるだけ早く、商品化するために。



「われわれは、迅速に行動する必要があった。」

「アメリカ国内で、これだけの数の被験者の子どもを見つけるのは不可能だった。」



後に、ファイザーの広報 ベッツィ・レイモンド(Betsy Raymond)は語った。

ファイザーの試験チームは、ナイジェリアへ向かった。

彼らは、そこで、200名の子どもたちに、新薬を投与した。

ファイザーは、ナイジェリア当局に許可を得たと主張しているが、ナイジェリア政府は否定している。

ファイザーは、患者の子どもの親に、新薬の実験であることを「口頭で伝えた」というが、親たちは、ファイザーのことも、実験のことも知らなかったと言っている。

その年、ファイザーは、アメリカで新薬の認可を得るために治験データを食品医薬品局−FDAに提出した。

その資料には実験を行ったナイジェリアの病院の倫理委員会の承諾を得たと記載され、その承認書類もあったが、当時、その病院には、倫理委員会はなかったことが後に判明した。

その他、50箇所近くにデータや記述の矛盾を FDAは発見、指摘した。

それについてファイザーは、「実験の有効性や結果について 影響を与えるものではない」と主張した。

1997年12月19日、FDAは、トラバンについて、"大人にのみ使用できる薬"として認可した。

また、少し後に、EU(欧州連合)でも認可が下りたが、「子どもには使うべきではない」とされた。

それでも、トロバンは、ファイザーの大規模な宣伝販売戦略で、たちまち、主要な医薬品となった。

しかし、その後、16ヶ月間に、副作用が疑われる140件の肝機能障害、14件の肝不全、そして、6人死者が発生した。

FDAは、トロバンの使用を、他の選択肢がない場合に限るよう警告、EUでは、認可を無期限の停止とした。

2000年、ワシントンポストが、一年に渡る調査報道記事を発表、この問題が明るみに出る。

2001年、ナイジェリア政府は、この問題について、調査を行ったが最終的な調査報告書は、弁護士、ジャーナリストの要求にもかかわらず、公表されなかった。

2001年、ナイジェリアの患者の家族、遺族30人が、「残酷で、非人道的で尊厳を奪う処置」に、子どもたちをさらしたとして、アメリカ、ニューヨークの裁判所に対し、ファイザーを訴える。

2005年、ニューヨークの裁判所は、訴えを退ける。

2007年4月、ナイジェリアの新大統領としてウマル・ヤルアドゥアが当選する。

2007年6月4日、ナイジェリア新政権は、当局に許可を得ずに実験を行ったことと、この薬によって、障害や奇形、そして50人以上が死亡したとして、ファイザーを相手に、8000億円を求める訴訟を起こした。

それに対しファイザーは、死んだ子どもの数は11人だけで、それも、薬によるものではないとしている。

ファイザーは、トロバンのために、世界27カ国、1万3千人に対し試験を行った。

ファイザー、トロバン、ナイジェリアに限らず、今、新薬は、世界中の、特に発展途上国の貧しい人々を使って試験されている。

貧しくて病院にも行った事のない人々は、他の薬の影響がないため、試験データの収集には最適だという。

行政の監視システムが弱く、国際社会の目も届かない場所に住み、文字を読み書きできず、医療知識の乏しい人々は、先進国の製薬会社にとって、大切な実験用のモルモットとなっている。

患者番号[0069]の少女は、実験薬が効かなかった時点で、治療を切り替えるべきだったと、専門家たちは、指摘している。

しかし、患者番号[0069]は、そのまま放置され、試験は続けられ、そして、死んだ。

ほんの数メートル離れた場所で、国際医療団体「国境なき医師団」が、正規の治療を行っていたが、
患者たちにも、親たちにも、そのことは知らされていなかった。






平和とは、いったい何なのでしょうか。

健康に、安全に、くらすことが最低条件だとすると、今の時代においては、多かれ少なかれその最低条件さえも、背景として犠牲になっている人々がいなくては成立しないことになる。

平和って、いったい何なのでしょうか。

“無知”ほど、平和を遠のけるものはありません。

まずは、われわれが、こうやって、健康に、安全に暮らすことができている背景、を知ることを始めなければ、いくら“人のため”を謳っても、しょせん机上の空論でしかない。

“人のため”

は、道徳なんかじゃない。

真理だ。

平和を求める生命集合体に宿された、真理だ。

あいまいな知識、は真理に盲目だ。

一人の人間として、“生命集合体”を意識できる、生き方をしたい。









※2000年に、この問題を取り上げた ワシントンポストの調査報道記事
As Drug Testing Spreads, Profits and Lives Hang in Balance
December 17, 2000
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A11939-2000Dec15

※ワシントンポストの続報
Panel Faults Pfizer in '96 Clinical Trial In Nigeria
Unapproved Drug Tested on Children
May 7, 2006
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/05/06/AR2006050601338.html

※今年6月のナイジェリア裁判について
フランス24
Nigeria launches seven billion dollars case against Phizer
June 28, 2007
http://www.france24.com/france24Public/en/news/business/20070627-Nigeria-accuses-Pfizer-illegal-drug-testing.html

※BBC
Q&A: Nigeria sues Pfizer
5 June 2007
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/6721771.stm

※写真


子どもたちに対し、トラバンの試験が行われた
The Infectious Diseases 病院


病院の中の様子


トラバンの投与を受けたハヤラ(Hajara)ちゃん
現在、耳が聞こえず、話すこともできない




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